ホロコースト論争―ホロコースト否定の検証

ホロコースト否定論(否認論)を徹底的に検証するブログ

何故ホロコーストを否定するの?

ホロコーストを否定する理由。

ホロコーストの定説は、アメリカのホロコースト博物館のサイトによるものとして。以下で丁寧に説明されていると思います。

encyclopedia.ushmm.org

この説明に代表されるような内容で、ホロコーストの内容を説明するものは全て定説・通説・正史などと呼びます。日本では否定派は「正史」と呼ぶことがほとんどのようです。また、否定派と私は呼ぶことが多いと思いますが、ホロコースト否定派は割りと「(歴史)修正主義者」と呼ばれたがるようです。西岡昌紀は「見直し論者」と呼ばれたいそうです。

日本の歴史認識問題では、いわゆる保守右派と呼ばれるような、例えば慰安婦の強制などなかった、や、南京大虐殺と呼ばれるような事件はなかった、や、731部隊は単なる防疫給水部隊だった、のような主張をする人たちはあまり修正主義者と呼ばれたがらず、どちらかと言えば「歴史修正主義」は批判の意味が込められて使われることが多いのとは、ホロコースト否定の場合は異なっているようです。

しかしながら、ホロコーストの正史に対し否定的な主張を行う理由は、否定派に言わせると、単に正史が誤っているからだ、ということになります。否定派は自分達の主張が正しいのであって、その他大勢の世界中の正史派学者の主張こそが誤っている、というわけです。

あるいは、「検証」という言葉もよく使われるようです。これは、欧州の半数程度の国で、ホロコースト否定の主張を公然と行うことを法律で禁止していることに対応したものであると考えられ、否定しようとしているのではなく、検証しているに過ぎない、とのことのようです。従って、ホロコーストの検証まで禁止するのはおかしい、のように言われることが多いようです。もちろん、欧州でホロコースト否定の主張を禁止している各国は、ホロコーストの検証を禁止しているわけではありません。どの国にもホロコーストを調査研究する学者や機関はあるでしょうし、それらが法的に取り締られたという話もありません。否定者のそうしたクレームは、何故正史派的な学術検証が合法なのに、否定派のやり方が違法になるのか? 同じ検証ではないか、と言いたいのでしょう。これは近年問題になっているSNS上での誹謗中傷問題と似ていて、誹謗中傷ではなく正当な批判である、のような言い分に過ぎないと思います。しかしながら、何故か日本では「検証を禁止している」という言い方が一人歩きして、まるでホロコースト研究自体が禁止されているかのような主張をしている人さえいます。なんだかわけが分かりませんね。

 

閑話休題―。

 

反ユダヤ主義ホロコースト否定

ホロコースト否定の有名な裁判であるアーヴィングvsリップシュタット裁判では、ホロコースト否定者であったアーヴィングは、彼自身の反ユダヤ主義ホロコースト否定の主張を行う理由であったと判決で認定されました。リップシュタット側が、アーヴィングが反ユダヤ主義者である証拠を色々と提出したのです。例えば、自分の子供に反ユダヤ主義的な子守唄を歌って聴かせていた、などです。ネオナチの集会にも出席していましたし、反ユダヤ主義者であると認められても仕方ない部分もありました。私個人はそれよりもむしろ、ヒトラーを可能な限り擁護してきたアーヴィング自身の仕事がそうさせたのだと思っていますが、ヒトラーは明確な反ユダヤ主義者ですからね。

しかし、反ユダヤ主義ってある意味で非常に掴みどころのない主義主張でもあるのです。古くは、キリスト教の発展と共にユダヤ教徒たちがキリスト教側に差別されるに至ったなる歴史的経緯はあるのですが、イエス・キリストユダヤ人のせいで処刑された恨みからである、と考えるとわけがわからなくなります。現代社会でそんなことを言う人は多分いないからです。

また、確かに陰謀論的によく言われるように、ユダヤ金融資本が世界を裏で支配しており、ユダヤ人こそが諸悪の根源だ、みたいな思想がないとは言いませんが、ホロコースト否定はそれだけでは説明できません。例えば、ネオナチたちは、ナチスを信奉、あるいは復興させたい気持ちが強いのであり、日本で言えば「自虐史観」的な考え方こそを消したいために、ホロコーストなんか実際にはやってない、と主張していると考えれば、反ユダヤ主義は主たる理由ではありません。

さらには、陰謀論とまでは言わなくとも、陰謀史観的な考え方をする人たちはかなり多い気がします。代表例が、ホロコーストユダヤシオニストたちがイスラエル建国のために多額の賠償金欲しさにでっち上げたものである、のような考え方です。あるいはまた、戦勝国である連合国側が自身の罪を糊塗して絶対正義として振る舞いたいが為に、敗戦国であるドイツを殊更に悪辣な存在であったことを強調する為に、ドイツが政策としてユダヤ人迫害を実行していたことを利用して、ホロコーストなるありもしない大犯罪をでっち上げたのだ、のような考え方もあります。

こうして考えていくと、ホロコーストを否定する理由は一筋縄では括れないと言いますか、むしろ反ユダヤ主義だけでなくその他の様々な考え方が、ホロコースト否定の要因になっていると言えてくると思います。例えば、中東のパレスチナやあるいはイランなどはホロコーストを否定する主張を行っていますが、それらは反ユダヤ主義というよりは明確にイスラエルと敵対しているからに他なりません。

従って、ホロコースを否定する人たちは、ただ純粋にホロコーストの歴史を懐疑しているような人から、陰謀史観の人や、イスラエルと敵対関係の国、そして反ユダヤ主義者などを含めて、様々な勢力の利害、あるいは考え方が一致するからこそホロコースト否定が存在していると言えるように思われます。

但し、ホロコースト否定の主張を行うにあたって、陰謀論は使用せざるを得ない不可欠な要素ではあります。何故ならば、ホロコーストには多数の否定し得ない文書史料や膨大な数の証言があり、絶対に証明不可能な、証拠文書の偽造組織や偽造証言の指導者の想定なしにはあり得ないからです。否定派はそんなことは絶対に言いませんが。

ハーバー・ビジネス・オンラインより