ホロコースト論争―ホロコースト否定の検証

ホロコースト否定論(否認論)を徹底的に検証するブログ

マルコポーロ事件

 

西岡昌紀という人物について。

1995年に起きたマルコポーロ事件についてのその事件内容で、ここで私が改めて語ることも特にはありません。示したリンク先のWikipedia記事の履歴を見ると、「2020mars」なる人物がたくさんの編集行為を行っていることがわかりますが、2020marsは西岡昌紀氏自身であることは明らかで、自分自身についてのページすら自分で編集する人です(ウィキペディアの方針に反しています)。

西岡氏はそのマルコポーロ事件で有名になった人物ですが、私が西岡氏がツイッター上で活動している事実を知ったのは今が2023年として、およそ3年前のことで、それ以前のことについてはそこから調べていろいろ知ったことになります。別に私は西岡氏を追っかけているわけではないのですが、事実上、日本にはホロコースト否定者として有名であり、かつ具体的な議論を行なっている人物は西岡氏以外はいないため、日本でホロコースト否定に関心を持っている以上はどうしたって西岡氏の情報は入ってきます。

西岡氏自身も編集するウィキペディアの西岡氏の2023年5月現在のページに書かれていない事柄としては、西岡氏は地球温暖化否定論者でもあることです。また、西岡氏は日本の歴史認識問題の一つである731部隊について、生体実験を行なっていた事実は認めています*1。しかしウィキペディアの同氏のページにあるポーランド現代史の闇について、その記事の一部に事実誤認があることについては、私からの指摘により西岡氏も明確に認めています。誤りは当該記事2ページ目にある、「ドイツでは発禁処分」のことで、「ドイツでは、この本は事実上の発禁処分になったという」と書いていますが、今時こんなネタはネットで検索すれば、即座に調べがつきます。発禁処分になんかなっておらず、最初は反ユダヤ主義的として最初の出版社が出版を自主的に取り下げただけで、その年のうちに別の出版社から出版されています。

 

さて、そのような指摘まで行う私と西岡氏の関係ですが、当然ツイッター上でやりあってきたという経緯があります。現在は西岡氏にブロックされてしまっておりますが、

 

その理由は、西岡氏が私とのやり取りの最後の方で、西岡氏の著書である『アウシュヴィッツガス室」の真実』を所有していない人とと議論したくない、の趣旨のことを言ったので、そうなのかなと思っています。AmazonKindle Unlimitedで読めるのは知っているのですが、読む本もほぼないので解約しており読めません。アマゾンでは、再版のものが1100円で売っているのも知っていますが、そもそも西岡氏の主張のほとんど全ては欧米の歴史修正主義者の借り物でしかないので、買う価値はないと判断しております。1100円程度の本、印税収入もほぼないに等しいレベルだと思うので、ネットで無料公開して仕舞えばいいのに、と思います。実際欧米の歴史修正主義者の著書や論文の多くはネットで無料公開されています。『ホロコースト論争』の加藤継志もそうですが、なぜ今どきわざわざ本なんか出して、それをネットで無料公開しないのか、理由がよくわかりません。日本人のホロコースト否定者がドイツに送還されることも考え難いし。

 

さてそんな西岡氏ですが、彼の主張は述べた通り、欧米の歴史修正主義者の借り物でしかありません。西岡氏自身の説など聞いたこともありません。彼は、1995年にマルコポーロの当該記事を公表する以前は、英字新聞への投稿マニアだったそうです(これも西岡氏のウィキペディア記事には書いていませんが、リップシュタットの『ホロコーストの真実』の序文(推薦の言葉)を書いたデーブ・スペクターがそう書いています)。それで多少欧米の事情を知っていたのでしょう、ホロコースト否定論が欧米では賑わっていると。ネットの発達していなかった1990年代くらいまでは、日本にはホロコースト否定論はほとんど輸入されてこなかった経緯がありますから、彼はそうした欧米の事情を知って驚いたのかもしれません。しかし、デーブ・スペクターですらも「その内容には、オリジナリティのかけらもなく」と評するほどに、西岡の主張内容は欧米の否定論を借りただけだったのです。というか、多少なりとも欧米の否定論を知った上で西岡氏と議論すればわかりますが、彼の主張は欧米の否定派の劣化版でしかありません。しかもそれら否定派の主張を西岡氏自身で検証した形跡もありません。彼は単に鵜呑みにしているだけなのです。

しかも、西岡氏が否定論で何かわからないことがあったりすると、アメリカの歴史評論研究所の所長であるマーク・ウェーバーに聞いたり、フランスの修正主義者ロベール・フォーリソンに聞いたり、と修正主義者にしか尋ねていないようなのです。マルコポーロ事件の時、雑誌「創」に当該事件の件で記事を書いた江川紹子氏は、当該記事の中で西岡氏に犠牲者にインタビューしたのか?と尋ねたら、全くしていないと回答が返ってきたのだとか。あるいは以前の記事で取り上げたアウシュヴィッツ第一火葬場の捏造疑惑に関し、西岡氏はしつこいくらい煙突の戦後の捏造を主張しているのにも関わらず、アウシュヴィッツ収容所への訪問時に、職員に煙突のことを一言も聞かなかったそうです(私自身が西岡氏から直接そう聞きました)。なんでも、修正主義者と疑われてはまずいからだと考えて聞けなかったと、私に言い訳してくれましたが、ところがマルコポーロ事件時に現地取材したジャーナリストの福田みずほ氏は普通に煙突のことも職員に尋ねているのです(雑誌『創』1995年4月号、pp.122ff)。

以上のことなど(他にも理由はいっぱいあります)から、西岡氏はホロコースト否定論についてほとんど何も自身では検証していないことがわかります。ホロコースト否定論に感化されてしまった人は、多分その全員が否定論それ自身を検証しようとする気が全くないようです

 

マルコポーロ事件についての私見・雑観。

で、前述した江川紹子氏の雑誌『創』(1995年4月号、pp.110ff)「『マルコポーロ』廃刊事件で何が問われたか」を読むと、以下のようにあります。

廃刊にいたる経緯
記事の反響は大きく、すばやかった。 発売当日、ロサンゼルスに本拠地を置くユダヤ人団体サイモン・ウィーゼンタ ール・センターに東京からファックス で、『マルコ』の記事が送られた。その 後ウィーゼンタール・センターは日本の駐米大使やロスの日本領事館などに抗議。さらに大手企業に対し、『マルコ』 への広告出稿を中止するよう呼びかけた。フォルクスワーゲンカルティエジ ャパン、マイクロソフトフィリップモリス三菱自動車などが広告拒否を表明。カルティエのように、『マルコ』 一 だけでなく、文藝春秋社のすべての雑誌からの撤退を決めた社もあった。
日本での動きもあった。駐日イスラエル大使館が『マルコ』編集部に対して抗議、 「反論を執筆していただきたい」とする編集部に対し、大使館は求めているのは謝罪・訂正であるとして、その申し出を拒否したが、交渉そのものを受け付けないわけではなかった。

ところが、当時のマルコポーロ編集長だった花田紀凱氏によると、事情がかなり違います。

花「編集長は解任だけどね。会社を辞めたのはその1年後です」

康「さすがユダヤでね、徹底的に締め上げてきたわけだよ。強い力で広告主を締め上げてくるっていうのは、さすがだよね」

花「康さんね、でもそれは実際そこまでのことはなかったの。確かに、“広告出稿拒否がくるんじゃないか?”っていう話は会議の中では出てました。外国の企業だって日本の雑誌にたくさん広告出をしてますからね。そこから“クレームがくるんじゃないか”っていう話は出てたんです。ただ、実際にあったのは、三菱自動車の8ページにわたる広告、“初めてとれた”って広告部も非常に喜んでた大きな契約だったんだけど、そこが、“ちょっと様子を見させて”って代理店を通じて言ってきたことくらいなんです」

――実際に報道されているように、何個か広告が落ちたということはなかったんですね。

ユダヤ組織が文藝春秋の社員に講義

花「それはない。そういう話は出てたというだけですね。まあそう思うのも当然だよね。

20年前の記憶から証言している当事者の花田氏と、事件当時さまざまな情報源から情報を得ていた江川氏のどちらが正しいのか軽々には言えませんが、江川氏がマルコポーロへの記事のために阪神淡路大震災を頑張って取材していたのに廃刊になってしまった憤りと、廃刊事件をあまり大したことだとは思っていなかった様子の花田氏の温度差は考慮の余地はあると思われます。

しかし、江川氏は、当時の欧米の事情にはあまり通じていなかった様子で、欧米では1980年代ごろから2000年くらいまでは、社会的にホロコースト否定論は大問題になっていた事実を鑑みると、当時のサイモン・ヴィーゼンタール・センター(SWC)が日本という辺境の国でのホロコースト否定論の大々的紹介に過剰とも言える反応を示したのは、十分あり得る話だと思います。ただしホロコースト否定があまり問題になっていない近年でも、SWCは非常に機敏な反応を示すことも多々あるようです。反ユダヤ主義監視団体ですから、団体の目的であるお仕事をしているだけなのかもしれませんが。

news.yahoo.co.jp

個人的に思うこととしては、西岡氏が当該記事で「タブー」と、ホロコーストについての否定的議論を表現したのが、この廃刊事件でタブーだったのが本当であるかのように思われてしまった感があることが残念です。日本の歴史認識問題がそうであるように、ホロコースト議論とて、別にタブーではないからです。特に、ホロコースト否定禁止法のない日本では、ホロコースト否定を主張すること自体何の違法性もありません。

ホロコースト否定論は私自身は酷いデマだと思ってはいますが、法的根拠もないのに規制されるべき謂れはありません。言論の自由市場の中で、活発な議論を経て、デマはデマだと見抜かれるべきだと考えています。デマを主張することの責任を取ってもらえるのなら、自由にデマは述べていいはずです。場合によっては、デマの主張を裁判で認められて、名誉毀損などの損害賠償金を払えばいいのです。それが本来の自由主義社会のあり方ではないかと考えます。

私の思想としては、デマはデマとして可能な限り自分自身で見抜くべき、と思っています。世の中無数の嘘があるのですから、私たちが社会生活を送る限り、社会の中にある嘘と戦っていかなければならないのです。

それだけに、文藝春秋社があっさりマルコポーロを廃刊にしてしまった事実は非常に残念極まりないと思っています。あの時すべきだったことは、自社で徹底的に西岡論文なり、ホロコースト否定論の検証をして、その総括記事を掲載することでした。

 

マルコポーロ記事には何が書いてあったの?

記事自体は日本のネオナチがどうやら勝手に公開しているようです。著作権的に問題ある気もしますが、リンクを紹介しておきます(私の環境ではサムネイルに表示される文字列が文字化けしてしまいますが)。

www7.plala.or.jp

で、以前にも反論というか、クソミソにこき下ろしているのですが、この論文はただのゴミであり、読む価値は全くありません。単に、西岡が欧米のホロコースト否認論を信仰レベルで信じ込んでしまい、その胸中を独白したに過ぎません。西岡は、自説への承認欲求が異常に強い人であることは、議論した経験から私自身がよく感じ取っています。彼は自身が信じ込むと、それを吹聴したくなる人なのです。何故その自身の感覚を疑うことを知らないのか、私にはよくわかりません。ともかく、自身のWikipedia記事を自身で編集することを厭わない人物ですから、西岡氏がとんでもなく承認欲求の強い人であることはおわかりいただけるかと思います

今回は、特にホロコースト否定論それ自体に関することは述べませんでしたが、以上です。

*1:731部隊が生体実験を行なっていたことや細菌戦をやっていたことは史実です。米軍が石井らを戦犯裁判にかけない代わりに取引としてその成果事実を極秘裏に米国に持ち帰ったことは有名な話で、ヒルレポートやフェルレポートなど、それらは米国でとっくの昔に機密解除されて知られています